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多様性、テロワール、偏見、モルドヴァ

3月10日(日)

a wine from moldova 2009年に、ハンガリーで開催されるFAOのシンポジウムで報告する機会がありました。

東欧の成果物流通に関するテーマで、当時科研ですすめていた内容を報告するつもりでしたが、心配なのは当時の東欧の経済の変革はとんでもなく早い。1年前の調査結果はもうすっかり変わっているということもある。

それでハンガリーに行く前にポーランドによって現地調査をしてからブダペストに乗り込むことにしました。

調査内容をホテルで取りまとめているとき、息抜きのためのワインをスーパーで買ったのがはじめてのモルドヴァ産。今まで飲んだことのないスパイシー、ハーブで香り付け味付けしたような、薬草が入ったホットワインの冷たいやつ、といった感じのワイン。これはだめだと。3分の1も飲めなかった。

そんな経験が後悔とともによみがえる本。"TASTING THE PAST"

なんとなく、名の通ったブドウ品種からできたワインが良いワイン、みたいな、それ以外は質の低いワインみたいな偏見を持っていました。そんなことはない。

十勝ワインはヤマブドウとともに、十勝の土地に合った突然変異の品種が一つの土台になっています。土地に合った突然変異というのはそれぞれの風土に適した品種の出現ということであり、多様性の広がりとも評価できるわけです。

多様な品種の多様なワインを楽しむ。その土地の。テルワールとは、自然環境全般、土壌、気候、地形といった要素を含む、包括的なものとして理解すべきなんだそうです。そこに根付いている品種こそ大事と述べられています。

多様性を支える要素として微生物が科学的に位置づけられれば、有機農業の評価と多様性が結びつくかもしれません。有機農業の評価はまだ固まったものではないと思いますが、有機農業は何かということの理解にはつながるだろう、その先に有機農業の真の、というか、多くの人が納得してくれる客観的評価があるかもしれません。

独自品種を大事にするとともに、そこに移植されて根付いた品種も大事にしたい。十勝では清見、清舞、そして山幸。大事にしたいですね。

(仙北谷)

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