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"コメ"になった小麦
2025年9月30日(月)
昨日29日は産学官金連携交流会「大人のオープンキャンパス」でした。
交流会のテーマは「十勝における農産物の高付加価値化」で、第2部では講演会があり、はじめに敷島製パンの山田マネージャーから「にほんの小麦と生きていく。」と題した基調講演をいただきました。
ご存じのように敷島製パンは、国産小麦を使った製品を「和小麦」ブランドとして展開しています。お話によると国産小麦使用の発端は、輸入小麦の価格数量が不安定になることに備え、安定的に原料を確保するためということのようでした。
しかし考えるまでもなく「付加価値」とは消費者にとっての価値であるべき。原料の安定的確保というメーカーにとっての価値は、消費者にどんな価値をもたらすのか、ちょっとご意見を伺いたいと思って、第3部の懇親会に参加したわけです。
そうしたところ懇親会では倉持先生の奥様につかまりおめにかかり、
「敷島製パンの社長に『国産小麦でパンを作ってください』と言ったのは私なのよ。」
とおっしゃる。
倉持先生の奥様というと、消費者の団体でご活躍なさっているわけですから、消費者にとっての価値をよく理解なさっているはず。その方がおっしゃるのだからその意味は重いでしょう。
先日9月28日(日)の日経新聞では日本の小麦がカラー特集され、そのほとんどを十勝の取り組みが占めています。加納製パンの写真も、ドーン、という感じで載っています。
その中で本別の前田さんは、初めて自分の小麦で作られたパンを食べたときの味について「自分たちの小麦がこんな味がするのかと不思議でした。おふくろは泣いて喜んでいましたね。」とおっしゃる。
ここで前田さんがおっしゃる「自分たち」は「自分たち生産者」をさしていると思いますが、少なくとも十勝の消費者は自分たちの地域でとれた小麦と意識しています。それは国産米を食べることに価値を見いだす消費者と全く変わらないのかもしれません。そういう意味で十勝の小麦は"コメ"と同等になってきたのかもしれませんし、その気持ちは他の地域にも徐々にひろがっていくのでしょう。
倉持先生の奥様はこの点を鋭くご指摘なさったのでしょう。
私は学部の講義で「基礎経営学」という講義を担当していて、企業のケーススタディをベースに経営学の基本的な考え方を紹介しています。
この講義の中で、20年ちかく前ですが、敷島製パンの取り組みを紹介しようかと思ったのですが、「敷島製パンの企業ブランドPascoのことは、畜大生はほとんど知らないだろうなぁ」と思ってやめたことがあります。
これについて今では後悔しておりまして、今年取り上げてみようかなと、ちょっと思っています。時間的に余裕があればですが。
(仙北谷)