卒業生から
生産者の役に立つ技術を探り、農業の未来を側面から支えたい
三宅 俊輔(みやけ しゅんすけ)
2003年3月畜産管理学科卒業(現畜産科学課程)
2005年3月大学院畜産学研究科修士課程修了
名古屋市出身
地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部根釧農業試験場研究部地域技術グループ勤務
特定の企業の利益のためではなく、世の中の役に立つ仕事がしたくて公務員を志望しました。私の父が転勤族のサラリーマンで、同じ家に住んでいる家族とも顔を合わせられないくらい忙しくしていたため、ノルマや収益に負われる仕事には就きたくないという思いがありました。国家I種、II種、北海道職員を受けて全て合格したのですが、国家公務員だと全国転勤になってしまうので北海道職員を選択しました。
ひとくちに公務員といっても検疫や家畜防疫員、食肉衛生検査員など「食」に関わる仕事はいろいろあります。私の場合、最初は長沼の中央農業試験場に配属され、4年前に現在の中春別の試験場に移動になりました。担当は農業経営部門の研究で、農家の実態調査を基本にしています。まずテーマに合わせて調査対象地を選び、農協に協力を依頼。了解を得られたら農家を紹介していただき、今度はそれぞれの農家を訪問。準備に何ヶ月もかかります。調査では経営実態を細かく聞き取り、提供していただいた収支のデータを把握した上で、分析や考察をおこないます。
常に心がけているのは「何が農家さんの役に立つのか」ということ。中には統計的な分析を主眼とする研究もありますが、それでは全体の傾向はわかっても「農家さんの顔」まではわかりません。農家の実態を踏まえた有効な方策を提案するためにも、実際に足を運び、話に耳を傾けることが重要だと思っています。調査に協力していただく農家の方には時間と手間を割いてもらうので、結果をお知らせしたときに喜んでいただけると一番うれしい。やっててよかったと感じます。
こうしたフィールドワークは畜大時代から取り組んできましたから、学生の時に教えられたことが現在非常に生きていると感じます。もう一つ畜大でよかったと思うのは、深い関係の友人を作れたこと。ほぼすべての学生が一人暮らしなので、入学当初は誰もがひとりぼっちからスタート。都会の大学のように街で遊んでバラバラに家に帰る生活とは、友人とのつきあい方も違うと思います。
いま、経済のグローバル化や財政支援の現象、生産資材の高騰など、農業を取り巻く条件が不安定になっていて先行きが不透明な状況です。だからこそ、どのような方向を目指す激化、その時に乗り越えなければならないハードルは何かを我々が明らかにしていかなければなりません。どのような技術が必要なのか試験場の技術部門とも協力して、いち早く打ち出していくことが求められます。目下の目標は研究対象としている酪農経営をもとに博士論文を書くこと。個人的な業績を残すという意味ではなく、論文を書けるくらいしっかり仕事をしなければという自戒を込めて、そう考えています。